2011/09/19

三島由紀夫

YouTubeで三島由紀夫のインタビューを見つけた。
おなじみ右の人たちが流したであろう動画だったので誇張している場面もあったが、興味深いとおもった一節があったので文字におこしてメモしておく。

現代の死とは』

リルケが書いておりますが、現代人はもうドラマチックな死ができなくなった。
英雄的な死というもののない時代に我々は生きております。

今の青年は、スリルを求めることもありましょう、あるいはいつ死ぬかという恐怖もないではないでしょう が、死が生の前提となっているという緊張した状態にはない。そういうことを考えますと仕事をやっています時になんか生の倦怠といいますか、ただ人間が自分のためだけに生きるということに卑しいものを感じるのは当然なのであります。それで人間の生命は不思議なもので、自分のために生きて自分のためだけに死ぬというほどに人間は強くないのです。というのも人間は理想なり何かのためということを考えているので生きるのも自分のためだけに生きることにはすぐ飽きてしまう。すると死ぬのも何かのためというのが必ず出てくる。それが昔いわれた大義というものです。そして大義のために死ぬということが人間の最も華々しいあるいは英雄的なあるいは立派な死に方だと考えられてきた。しかし今は大義がない。これは民主主義の政治形態には大義なんてものが要らないので当然なんですが、それでも心の中に自分を超える価値が認められなければ生きてることすら無意味であるというような心理状態がないわけではない。

自分にかえって考えてみますと死をいつか来るんだと、それも遠くない将来に来るんだと(戦争の時)考えていた。その心理状態は今に比べ幸福だったんです。それは実に不思議なことですが、記憶の中で美しく見えるだけでなく人間はそういう時妙に幸福になる。今われわれが求めている幸福は生きる幸福であり、それは家庭の幸福でありレジャーの幸福であり楽しみでありましょうが、しかし自分が死ぬと決まっている人間の幸福は、今ちょっとないんじゃないかと。そういうことを考えて、それじゃあ死というものをお前はおそれないかと言われますと、私は病気になれば死を恐れます。癌になるのも嫌で考えるのも恐ろしい。それだけに何かもっと名誉のある何かのためになる死に方をしたいと思いながらも、結局「葉隠」の著者のように生まれてきた時代が悪くて、一生そういうことを思い暮らしながら畳の上で死ぬことになるだろうと思います。


このインタビューの4年後、三島由紀夫は切腹して自殺されました。


私の中での三島由紀夫は教科書に名前が出ていた作家というそれだけのイメージしかなかったけれど、このインタビューを聞いてから少し調べてみると、三島由紀夫だけでなく様々な作家の思想というものがどれほど強烈なものだったのか知った。昔の日本文学をもっと読んでみたいと思う。

2 件のコメント:

  1. 確かに偏った考えの人だ、戦争を肯定する人にだけはなりたくない.

    現代は戦争には侵されていなくても、けっこう危なっかしいと思います.
    今回の原発問題のように、気づいていないだけで
    僕らは地雷の上に生活している様な状態なのかも、と考えてしまいます.

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  2. >カナ先輩
    そうですね。戦争はなにがあっても肯定してはならない。ましてや"戦争時代ほど自由だったことは、その後一度もありません"なんて言ってのけるその神経を疑います。

    これは勝手な推測なんですが、三島由紀夫は実際の戦時下には嘘の既往症をつきまくって入隊を拒否したいわゆる"臆病者"のレッテルがはられた人物だったそうです。親戚に永井荷風もいる名家の出身で、東大も出た秀才だったそうですが、常に強がっていなければいけないような苦しい生活をしていたのではないでしょうか。また、様々な活動をされるほど攻撃的な(エネルギーがありあまっている)方だったそうなので、彼の理想とする天皇(実際の天皇陛下は尊敬していなかったそうです)と世界、そして自分を突き詰めていった結果極端な思想に走ってしまったのだと思います。

    現代にもそこらじゅうで戦争という形ではなくてもいがみ合い、憎しみ合いがありますよね。昨日も香港の方たちとアジアについて喋っていたのですが、みながみな口をそろえて嫌悪感を表す国があり、仲間意識をもつ国があり、まるでそれが彼らのアイデンティティーのような...それでいいのか?と冷めた目で見てしまいました。

    地雷の上での生活は地雷を取り除かない限り、決して居心地良く平和に幸せに生きていくことはできません。地雷の除去、またはその上に住む人の不安からくる精神状態の衰退...どちらを選んだ方がよいなんて一目瞭然なんですけどね。既に衰退した精神状態では利害関係なしで物事を冷静に見ることなんてできないのかもしれませんが。

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